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外側の人の甲状腺検査批判と福島の現実 [原発事故関連]

やぁ久しぶり


最後に書いた記事がおよそ4年前。
それぐらい放置しても無くならないのが課金サービスのいいところ。
なんて言いながら、とりあえず生きていましたと現況報告。

2年前にスマホに変え(遅っ!)、つい最近Twitterを見始めたわけですが、かの菊池誠氏が、予想通りというか予想以上というか、劣化の一途をたどっているなぁ、という感じ。

まぁ、Twitterという発信媒体は、基本的に「つぶやき」という内的・私的なメッセージを発信するものであり(あと、情報の拡散か)、「説明」などで理解を広げるものではないのだろう(私も発信してみたが、正直文字数制限にイライラした。まぁ、本来の使い方から外れているからなのだろうが)。

それが、元々言葉(と思考)の足りない方にとっては使い勝手の良いツールと捉えられるであろう一方で、その「足りなさ」が露わになりやすいという負の側面もあると思う。

そう考えると、菊池氏が劣化して見えるのは、彼自身が変わっていったというよりも、胡麻化されていた部分がTwitterというツールによってどんどん表面化されてきた、と捉えるほうがより正確なのかもしれない。

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久々なので前置きが長くなりましたが、本題に入っていきます。

そんな菊池氏のTwitterを見ていると、どうやら「善意」という錯覚に基づく自己アピールネタ(私は理性的かつ人道的で正しい!)の一つに「(福島県で実施されている)甲状腺検査の批判」があるようであった。
それを見てて、どうも「現状認識」を間違えたまま批判している、というか「現状」ではなく「自分の得た情報と知識」ばかりを見て批判していると捉えられた。

まぁ、現場にいない人が現状を把握するのは困難なため、「よくある勘違い」ではあるものの、Twitterの怖いところはそんな意見であっても、一見理性的かつ人道的に見えるため、賛同者が現れ、拡散していくというところだ(菊池氏にしても、彼が発信源ではなく、誰かの受け売りなのかもしれない)。

おそらく、賛同者の多くは福島県外に住む方、若しくは県内の方でも子供や孫がいない方だと予想する(カウントしたわけではないが、確率的にはほぼ確実にそうなるだろう)。

県内の子供やその親達のためのものを、部外者の勘違いによる横槍で取り上げられてしまうのはひどい話だぞ、
ということで軌道修正を期待してこの記事を書く。

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この件に関しては、InterdisciplinaryのTAKESANさん(ublftboさん?)が『「過剰診断があるから甲状腺がん検診は止めるべき」、などと言うべきでは無い』等により、比較的冷静な視点で記事を書いている。

それでも、まだ「ずれている」と感じられたため
『検診と「不安」と「安心」と過剰診断とという記事に、(迷惑を顧みず)長々としたコメントを投稿した。

とは言え、TAKESANさんのブログを踏み台にしたようなやり方もどうかなぁ、という気持ちも出てきたため、この度約4年の沈黙を破り、ブログを更新しました。

まぁ、それぐらいしたくなるほど、この件は問題だと思うし、7年前の原発事故から今までの間も続く、あるいは深化する「内側と外側の分断」を如実に示すケースだと思う。

というわけで、他所のブログに投稿した文章を、多少改変(改ざんじゃないぞ)しつつ語っていこう。


※ 久々の執筆と、大量のテキストのため、不備や間違いも含んでそうだけど、それはおいおい修正することにしてとりあえずアップしておく(先言い訳)。

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まず、このブログの愛読者(なんていないだろうが)の方はご存知かもしれないけれど、私は事故当時も今も福島県在住です。原発爆発時の風下に位置し、避難勧告は出ないものの、そこそこ汚染されたところでした。

これを読んでいる皆さんがどちらの方かは存じませんが、ここでは「甲状腺検査の是非」という議論の対象地域の外側に居る人と想定し、そのような人が見落としているであろう「内側の現実」に基づいて書いていくことになります。

皆さんはその話題の甲状腺検査が、事故後に実施されている「県民健康調査」の中のひとつ、というのはご存知でしょうか。

ちなみに、私はこの「県民健康調査」には不信感を持っていますので、全県民が対象の「基本調査」に対して無回答で通しています。
とはいえ、全数調査を意気込んだ基本調査は、ふたを開けてみると回収率30%未満であったので、私が取り立てて“反体制的”であるわけではないでしょうね。

そんな私ですが、甲状腺検査については一定の評価をしてしまっています。

何故か?

結論を先に言えば「多くの県民にメリットがあったからです」

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でも、私が見る限りの「甲状腺検査批判」は、逆のことを言います。

甲状腺検査は、メリットが無い(あるいは有るという根拠がない)一方で、過剰診断等のデメリットがある、というのが最大公約数的なところでしょうか。
彼らが言う「あるべき診断」というのは、「死亡を防ぐため早期に疾患を見つけて治療するためのもの」だそうです。なのに、甲状腺検査にはその効果が無い、だからダメ、という話。

うん、“日常の健康診断”を想定すれば、それは多分正しい。

でも、原発事故に対応したあの甲状腺検査も同じ前提でなされているものだったのでしょうか?

実は、そこが「内側の現状」と「外側の想定」の大きなズレを生じさせているんですね。
内側にいる人は「日常の健康診断との性質の違い」にはすぐ気づく。でも外側の人はそれに気付けず、自分が知る「日常の健康診断」に寄せて考えてしまったのかもしれません。

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実は調査委員会も「原発事故で甲状腺がんが増えるはずだから早期に発見して早期に治療したい」という意図で検査を企画したわけでは無いのです(正確なところは福島県の県民健康調査のHPを参照あれ)。

甲状腺検査の説明を引用してみましょう。

「チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんがあります。これを踏まえ、子どもたちの健康を長期に見守るために、甲状腺検査を実施しています。」

おそらく、「甲状腺検査反対派」の方が読めば、前段のチェルノブイリの話に引っ張られそうですが、見るべきは後段の方です“甲状腺がんの早期発見に努める”とは言っていません。では、なんと言っているかといれば「健康を長期に見守る」なんです。

ところで、反対派の方がこの甲状腺検査について「甲状腺検診」あるいは「甲状腺がん検診」と言い換えて表現しているのをよく見かけます。
でも、正確な呼称はあくまで「甲状腺検査」であり、先ほど甲状腺検査は県民健康調査の一部と紹介した点を踏まえれば、実質的には甲状腺“調査”となるのです。

おっと、言葉尻の話をしているのではありません。
ここが一番本質的なところなのです。

この「調査」は、そもそも“日常の健康診断”で言うところの「ガンの早期発見」が目的ではないんです(だから批判派の掲げる根拠がこれを前提にしたものである限り、的を外し続けてしまう)。

健康診断は、健康に見える裏に隠された潜在的な疾患を見つけるためのものですよね。ですが、この調査はそうではなく、「健康を長期に見守る」、つまり「健康であることを確認し続ける」のが目的なのです。

よって、もし批判するとすれば、「被害者をモルモットのような観察対象として扱うな!」の方が筋を外していないと思います。

(だから私は健康調査に不信感を持っているのです)。

...ここまで聞いて、平和な日常を過ごし、普通の健康診断しか受けないような人はこの「健康を確認する」という言い方に違和感しか感じないかもしれません。

では、この意味を理解するのに必要な知識を二つ述べましょう。

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ひとつは「先行情報の存在」です。

まぁ、外の皆さんも当然ご存知だと思いますが、チェルノブイリ事故での甲状腺がんの増加という情報ですね。
この情報については、おそらく外側の皆さんよりも内側の方が早く広く情報が広まったと私は思います(自分が原発事故に巻き込まれたわけですからすぐに調べないわけない)。


そして「親の心配」です。

ひとつ言っておきたいのは、これは外側に皆さんが想像するそれの100倍以上は大きいと思った方がいいということ。
これは私の周囲の話であり、客観的データは持ってませんが、大人はほとんど自身への放射能の影響を怖がっていなかったんですよ。
でも、子供に対してはダメなんですね。例え1/1000以下の確率であっても、もし何かあったら子供に申し訳ないと不安になるわけです。なので、私の知る範囲で県外に避難した人のほとんどは母子でした(経済の柱である父親は仕事のため残る)。

ちょっと寄り道するけど、そんな子供を心配する親の気持ちを「放射脳」とバカにする人もいるようですね。
でもですよ、例えば拳銃の銃口が自分の子供に向けられた時、弾が出る確率が1/1000と分かっていたとしても、そこで子供を庇おうとしない親の方がおかしいと思いませんか?

また、リスクの比較を、としたり顔で言う人もいました。
それは道理なんだけど、「比較する時は常に天秤の片側に“子供の命”が乗っかっている」状況は、決してしたり顔で言えるような簡単な話ではないんです。
だから、避難を選択しなかった親御さんも「冷静に考えてそう判断した」というよりかは、これもまた「苦渋の選択」だったと私は思います。

おっと、話が少し深くなりすぎました。

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この2つにより生じるものは、当然
「うちの子供が甲状腺がんになったらどうしよう」ですよね。

そんな親の“狂おしいほどの”不安は、極度のストレスであり生活にも影響をあたえます(県外に避難する、というのがその一例)。


では、どうにかしてこの「不安」を取り除いてあげられないでしょうか?

そうです、ここに「健康を確認する」行為の意味が生じるのです。
つまり、「ガンの早期発見」のために調べるのではなく、「ガンで無いこと」を確認するために調べるんですね。

ちなみに、甲状腺検査批判をしている人は、反対の理由の一つとして「偽陽性(ガンでないのにガンと診断される)の多発によるデメリット」を挙げます。
ですが、この目的においては偽陰性(ガンなのにガンでないと診断される)の割合が小さいほど求められている結果(ガンでない)の信頼性が高まります。
つまり、発症を前提とすれば偽陽性率は注目すべき要因ですが、発症していないことを前提とすれば注目すべきは偽陰性率の低下の方なのです(ちなみに、大抵は偽陰性率を下げると偽陽性率が上がる)。

こうしてみると、「内側の問題認識」と「外側の問題認識」はほぼ正反対になっているわけです。

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こういう話になってくると、当然指摘される問題点があると思います。

ですが、それはひとまずおいておいて、仮に原発事故後にこの「甲状腺検査」が実施されていなかった場合どうなったか考えてみましょう。


おっと、事故後に『「大丈夫であること」ときちんと説明して不安を取り除けばいい』なんて聞こえの良い事を言う人もいましたが、正直甘っちょろいですよ。
だって、福島の人は原発に対して多少の不安を感じつつも、それに対して「大丈夫」と言いくるめられ、疑いながらも受け入れていたんですよ。なのに原発を爆発させ「大丈夫というのは嘘だった」事を明らかにしただけでなく、「(自分の)想定外だったから仕方ないよね」と開き直られたんですよ。
そんな目にあった人に「大丈夫」で安心させようなんて、期待する方がおかしいです。


おそらく多くの親達は、民間の病院に駆け込んだでしょうね。

だとどうなるか?

病院は儲かるかもしれませんが、病院では“診察”するわけですから、「偽陽性」を減らすことを考え、より確実で侵襲的な検査を実施するでしょう(ちなみに健康調査の甲状腺検査では、まず非侵襲的なエコー検査でスクリーニングします)。

また、甲状腺がんの専門医は多くない点を考えれば、誤診断や過剰診断も多くなるでしょう。そうなれば、もしかしたら手術されてしまっていた人は今より多くなっていたかもしれません。

(こういう事態を防ぐのも、甲状腺検査実施に踏み切った理由の一つ、と言っていた人がいたと記憶している)

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そのようにきちんと捉えていくと、実施された甲状腺検査は、少なくとも「やらない方が良かった」とか「やっても意味が無かった」とは言えないと思います。

県民健康調査が嫌いな私としてはくやしくもあるんだけど、少なくても甲状腺検査という手段は原発事故後のフォローとしては上手く出来ていると認めざるを得ないのではないでしょうか。



...と、ここで話を終わると、多分「モヤモヤ」が残る人が沢山いると思います。

そう、『「陰性」じゃなかった人の気持ちは?安心したいから受けたのに、さらに不安になっちゃうよね。』とか『やっぱり、偽陽性による不安は不当なものだから絶対許せない』と思う人も多いのではないでしょうか。

そう思った皆さんはヒューマニストなのかもしれない。

ではどうすればいいのですかね...。

こういう一部の人達の「不当な不安」を無くすために検査もせず診断もさせないようにして、全部が公平に「不安なまま」にしておけば良かったとでも?

この検査(調査)の結果としては、「不当に不安になる人」より、「陰性で安心する人」の方が圧倒的に多かった。
『最大多数の幸福』の原理から言えば「正しい選択」ではなかったのでしょうかね。


それでも『いや、たとえそうであっても不当な不安が出るのはダメ。そうなるくらいなら皆が不安を我慢すべきだ』と主張する人もいるでしょう(しつこいなぁ)。

まぁ、そういうポリシーを持つこと自体はいいでしょう。

でも、もしあなたがそう思い、かつ、あなたがこの「不満を我慢すべき皆」に含まれない立場であるのならば、その主張はヒューマニストとはかけ離れた『無責任な発言』でしかない点は自覚すべきだと思いますよ。

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『最大多数の幸福』という考え方には納得できない、という人は少なくないと思います(私だって、この方法が適切で最良だとは思っていません)。


念のため言えば、県民健康調査を実施する側も、何も「偽陽性」を量産しようとしているわけでなく、それを防ぐため過去の知見を参考にしながらそれなりに慎重にステップを踏んでやってると思いますよ。
(「偽陽性」を根拠に批判したいなら、“過去の知見”や調査結果しか参照しないのではなく、「実際にはどのような考えて、どのような手段で調査を進めているのか」を把握してからやる、というのが「当たり前」なのに、飛ばされている気もします)


先ほどは“『最大多数の幸福』の原理から言えば「正しい選択」”なんて言いましたが、実際には「選択せざるを得なかった」と表現するのが正しいでしょう。

その選択が正しくなかった、と言いたいのであれば、「じゃぁどうすれば良かったんですか」と聞きたい。

福島で求められたのは早急な対策だった。でも、あなたには7年も時間が与えられていたわけだからさぞかし素晴らしいアイディアがあるのでしょうね、と嫌味を投げつけたい。

福島の現状を踏まえず「何もしなくて良かった」という人がいたら、それはあなたが「何も考えてこなかった」ということ。
部外者だから「何も考えてこなかった」事自体は批判しないけど、何も考えてこなかったくせに、いきなり口出しするのはどうかと思うね。


そもそも『最大多数の幸福』なんて、今の原発状況そのものなんですね。

「原発を即時廃止すれば(経済的に)皆が不幸になる」ことを理由に、「原発を動かせば大部分が幸福になるが、一部にリスクを押し付ける」ことを是としているわけです。


冒頭で名前を出した菊池氏なんかは、甲状腺検査については「(一部の人に)害があるからやめろ!」という一方で、即時原発廃止については「経済が大変になるから今はやめるな!」と言うんですよね。
外側の人の認識においては別に問題ないんでしょうが、これまで述べてきた内側の視点においては「ダブルスタンダードな主張」に見えるんですよ。

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ちょっと話題がはずれたけれど、そろそろまとめ。

甲状腺検査を否定する方々を見ていて私が予想するのは、彼らは「チェルノブイリ事故の際は多くの子供が本来は必要が無かった手術を受けたかもしれない」というショッキングなニュースを知ったことによる心配(福島でも同じことが起こってしまうのでは)などという「善意」が根底にあるんだと思う。

また、甲状腺検査を否定する人は「放射能の影響は無い(または小さい)」と主張する人でもあることが多いため、「わざわざ検査するのは無駄」という心づもりも介在しているんだと思う。

ま、どんな思惑があろうと個人の自由ではあるけれど
外側の人間が内側の人間に干渉しようというのであれば、自分の思惑というフィルターを通し、通過したものだけを事実として考えるのではなく、まずは謙虚に内側の現実を解きほぐし、理解してからにして欲しいと強く思う。

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最後に。

原発事故の後、何が起きたか?

内側から外側を見てきた立場から言わせてもらえれば、外側の人たちが何かにつけ2分し(放射能の影響、原発の是非)、お互いがお互いを口汚く罵りあうようになった感じだ。

双方が「私の方が、福島の人のためを思っている」と主張するけど、双方とも「自分に都合のいい部分的な福島」しか見ていなかったり、果ては福島すら見ていない思想抗争的な様相にも発展する。

そんな偏った認識の状況を内側から見ていると、どちらも福島のことを「相手を叩くために都合の良い棍棒」としてしか見ていないのでは、などと邪推したくもなる。

そういいながらも、内側も同様の分裂が見られるわけだけどね。

外側の分裂が先か、内側の分裂が先か、それはわからない
でも、内側の分裂が広がるのは外側の分裂のせいではないかと思う。

気分としては大岡裁きの「子争い」だ。
「子供の手を引きあって、勝った方が本当の親」というあれだけど、あの話のように「実は先に手を離した方が勝ち」とはならないわけで、かといって引っ張られ続けるのもつらいところがあるなぁ。


そんなことを思う今日この頃であった。

ではでは(次は何年後?)
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