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「ゲーム脳の恐怖」5 ~感想と提言~ [ゲーム脳の恐怖]

 まず、何人もの人が言った事をなぞる事になりますが、「ゲーム脳」を否定することは、「ゲームは脳に何の影響も与えない」あるいは「ゲームは脳に良い」という結論を導くものではありません。

 正しかろうと間違いだろうと、という“悪い習慣”を止めさせる格好の“脅し”になるからいいじゃないか、と思う親の気持ちも分からないでもありません。 これをある人は「現代のなまはげ」と絶妙な例えをしましたが、本物のなまはげと違うのは、親もそれを本物と信じてしまっている事です。

 本物のなまはげでは、親はなまはげをなだめすかし、子供を庇います。しかし、このゲーム脳という新たななまはげにおいては、親までなまはげの脅しに追従し、子供は孤立してしまうのです。

 著者は、しきりに「子供を連れてきて、目の前でデータを見せれば止めるようになる」と言いますが、子供が知らない場所で、知らない人に知らない機械を体に取り付けられ、よく分からないグラフを見せられて「これは、痴呆症と同じなんだよ」と説明を受けるのはどうでしょう?
 実際、著者がこの実験を11歳の子供に施した際、「ボク頭が痛いよう」と言い出したそうです(でも、こんな倫理性の問題を指摘されるべき話を平気で持ち出す神経がよくわかりません)。
 ストレスは海馬を萎縮させるから、ロールプレイングもダメと言っていた人が、あえて子供にストレスを与えるがための計測を平気でやるって事も非常に矛盾です。


 この「ゲーム脳」の根拠は無いに等しく、著者の論理もまともなものではありません。おそらく、著者に「何故ゲームはダメなのか」を聞いても、「ゲーム脳になるから、痴呆症と同じになるから」という事しか言えないでしょう。
 提唱者本人が上手く説明できない事は、読者が説明できるはずありません。とすれば、「ゲーム脳」を利用する親がいたとしても、その親すら理解できてない根拠や論理が、子供が理解できるはずもありません。

 だったら、「勉強する時間を削ってゲームばかりしてると、成績悪くなって将来あなたが困るわよ」とか、「運動する時間を削ってゲームばかりしてると、体が弱くなって将来あなたが困るわよ」と言う方が、十分論理的であるし、説得力があるのではないでしょうか?


 もう一つ危惧するのは、子供に「痴呆症」への差別的視点を植え付けたりはしないかと言うことです(この本では、まるで「痴呆症」患者を、人間性の欠如の権化のように扱っています)。

 そして、差別自体も良くないのですが、その差別を教育に利用するのはもっとダメでしょう。
 例えば、「勉強しないとああなるわよ」と精神遅滞者を指さす親がいれば誰もが言いようのない嫌悪感を抱くでしょう。
 「ゲームばかりしていると、痴呆症と同じになるわよ」も同じです。


 著者は今でも講演会で活躍しているようですが、「ゲームを抑制しなくてはならない理由」という一見教育に良さそうなテーマの話であっても、本質的な部分でその主張が教育の糧にするに相応しい物であるのか十分検討して欲しいものです。
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