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トンデモ科学の世界 [書評]

 竹内薫+茂木健一郎(徳間書店1995)

 何度か図書館で借りた記憶があるのですが、ちっとも頭に残っていない。
 kikulogで批判的な話が出てたので、再度借りて読んでみました。
 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1171275645
 今結構TVに出てる茂木さんが著者だったんだ、という事に今回初めて気付きました。

 えー、竹内薫センセイは「99.9%は仮説」あたりは結構面白く読ませていただいたのですが、この本については正直幻滅です。

 科学哲学者という立場で、いわゆる「きわどい科学」を好意的に紹介する本を書こうと思い、ネーミングがたまたま「と学会」の本とかぶった、と言うのなら別に良かったのですが、それが意図的なものであった事に初めて気付きました(今までプロローグ読み飛ばしてました...)。
  
 この本は「と学会」へのアンチテーゼだったんですね。
 そういえば、表紙に描かれた紋章のようなものも、ライオン(?)の持つ剣が「と」の字の書かれたプレートを突き刺しています。

 プロローグは、「と学会」への悪意と、そして認識のズレが如実に現れています。
 私の読む限り(3~4冊ですが)「と学会」の本は、「とんでもない説」を、その説に含まれる現実との明らかな矛盾や、さらには並べ立てられた説から生じる矛盾という、”内包された矛盾”を見つけ出し楽しんでいる。言うなれば、論理不足、知識不足、理解不足、を指摘しているだけで、”科学という絶対基準”を元に断罪し嘲笑しているとはどうも読めない。

 また、プロローグでは「『なんとか学会』という隠れ蓑は使わずに、実名の人物が、堂々と主張する」と気炎を吐いているが、確かにペンネーム等を使っている方もいるけれど、巻末の学会員名簿には経歴などの詳細が書かれているし、各文章毎に執筆者、つまり文責を明記している。少なくとも「と学会」を隠れ蓑としているとは見えない。

 まぁ、プロローグについて沢山異議申し立てしたいところですが、私は「と学会員」でもないわけですし、この程度で止めておきます。

 そんな事よりも、そこまで「と学会」を意識して書いたのならば、「と学会」以上の魅力ある本にしろ、と言いたい。
 「買ってはいけない」に対する「『買ってはいけない』は買ってはいけない」は私は名著だと思う。しかし、このような対立を期待してバカを見た。

 竹内センセイは、お得意の科学史から比較的当たり障りの無い異端科学の例を幾つか持ち出すばかりで、「発掘」の努力が見られないし、バリエーションに乏しい。少なくとも、紹介する説の「トンデモ」度は、「と学会」が紹介するそれに足元にも及ばない。これではわざわざ「とんでも」の語を拝借した意味が無いのではないでしょうか。

 また、その人の主張の魅力を分りやすく紹介しているかというと、「と学会」にはるか及ばない。そして、結論もなんだかぼんやりして通俗的な物言いです。
 幾つか章の末尾を抜き出してみましょう。

・私たちは、たしかに、立ち止って、よく考えなくてはいけない時期にさしかかっている。こういう時代だからこそ、もう一度、小林秀雄を読み返すべきではなかろうか。
・という根本氏の言葉は、優等生と秀才だけが跋扈し、いつまでたっても世界に通用する天才が育たない日本の学界への痛烈な批判として、謙虚に受け止める必要があると思う。
・『衝突する宇宙』は、さまざまな意味で、読む価値のある本である。
・科学のグレー・ゾーンにおいては、何が起こるか分らないのだから。
・まじめな考古学者や天文学者は激怒するかもしれないが、シッチンの本には、古代文化の不思議な話がたくさんつまっていて、なにかと便利な本だと思うのである。

 まるで読書感想文か新聞の社会評並の、当たり障りが無い代わり、何も明確に示さない文章でした。

 さらに許せないのは、氏の担当のパートで最も多くのページ数を裂いているのが「私自身の異端説」であり、茂木センセイも同様に、結局「クオリアを言いたかったのね」とう代物でしかありませんでした。

 この本が、「竹内薫と茂木健一郎、異端科学と量子・意識を語る」であれば、ここまで悪く言いませんが、わざわざ『と学会のパロディー』と言い切っているくせに、それが感じられるのは、タイトルと表紙とプロローグだけ、では羊頭狗肉、「自分の本を売るために、売れてる本を不当に利用した」と批判されても仕方ないでしょう。
 

 果たして今の茂木さんは、今の人気の中で、この本を大々的に再販した方が良いと思っているのか、あるいは闇に葬りたいと思っているのか、どっちなのでしょうか。


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nohoho

私の印象では、茂木さんも最近はテレビの出過ぎのせいか、専門性が怪しくなってきていますね。大丈夫なんでしょうか?
by nohoho (2009-10-24 17:14) 

tamamusi

ケニチローモギの今日のツイッター見たら、パッキングがゲテ物だったらすいぞ。流石に慧眼。そーいへば、「自分であるためには、勝ち続けなければならない。」なんて歌を使って言い訳してたなぁ。
by tamamusi (2012-01-19 10:15) 

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